折り図のお絵描き- 1(風船の基本形を描く)
バケツをひっくり返したような…、としか表現できないような大雨にみまわれている今日この頃です。豪雨の影響を受けられた方々にお見舞い申し上げます。
さて今回は、折り図のお絵描き- 1(風船の基本形を描く)です。
折り紙の折り図は、折り手に正確に折り方を伝えることが第一の目的です。「正確に」という意味では精度の高い正確な図面を製図してゆく必要があります。しかし、紙の重なり・構造、そして現在の状態をわかりやすく示すために、少し立体的に誇張して描く必要もあります。
正確な図面という意味では、「製図」ですが、立体的に誇張した図は「お絵描き」であり、両者を持ち合わせた図を作成する必要があります。
折り紙の創作活動の初期のころは、折る工程のスナップショットを写真で残していましたが、講習でのわかりやすさを考慮し数年前から、講習資料の折り図をPCで描画するようにしました。最近になってやっとお絵かきソフトをそこそこ使いこなせるようになってきましたので、この「折り図のためのお絵描き」についてちょっとご紹介しましょう。(とはいえ、まだ使ったことのない機能が結構あるみたいです。奥が深いです。)
OpenOffice Draw による折り図作成
使用しているお絵描きソフトは、無料で入手使用できる統合オフィスソフト Apache Open Officeに含まれる Draw です。Freeのお絵描きソフトとしては、Inkscape がadobeの Illustratorの代替として広く使われているようですが、ちょっとずつ変化していく何枚もの折り図をパラパラ漫画のように作成するのには、OpenOffice Drawのほうがいいんじゃないかと(勝手に)思っています。
類似な無料で入手使用できる統合オフィスソフトとして、Open Officeから派生した LibreOffice というものもあるようで、これからちょっと使って見ようという方はこちらの方がいいかもしれません。本質的な機能はあまり変わらないようですが、アップデートやバグフィックスも豆で、マイクロソフトオフィスとの互換レベルも高いと聞いています。(私はもう使い慣れちゃったし、CPU負担も少なめなのでしばらくこのままのつもりです)
私のOpenOffice Draw による折り図作成方法は、A4サイズの用紙設定で、たいがいの場合20cm四方の折り紙を想定して、1ページに1枚ずつ工程にしたがって図を作成しています。各工程の折り図ができたら最終的に、A4サイズの中に12~15の工程図を縮小して納め、キャプションを加えて、全体の折り図として完成させています。
正確な「製図」の手法は、標準的な使い方なのできっと慣れれば問題ないかと思います。立体的に誇張した「お絵描き」のやり方を「風船の基本形」を一例に以下、手順を追って示してみましょう。
純粋な製図として直角二等辺三角形を描きます。
中に折り込まれている紙で、正しく製図します。
ここから、お絵描きです。
こんな手順で、折り図の中の1コマ「風船の基本形」を描くことができます。けっこう地味に手間がかかることがご理解いただけたらと思います。
ポイントは、折り紙を構成するすべての紙を(ちょっと歪ませたりしていますが)きちんと全部描いてあるということです。表面の紙1枚に影を付けるように、背面の紙の見える部分だけ描く方法もありますが、この後、めっくたり、開いたり、裏返したり…の操作した図をきちんと描いてゆくためには、ここで手を抜くとかえって面倒くさくなるようです。
すべての紙とその構造が図中に盛り込まれていますので、お絵描きソフト内のバーチャルな空間で折り紙をしている感じになります。面倒くさいと一蹴されるとそれまでですが、図に表してみると新たな発見があったり、あらたな作品への展開が見えてくることもあります。
今回の背面の紙を適度に歪ませて、立体的な誇張を得る方法は、あくまでも疑似的な手法です。2枚目、3枚目の様子が下部から覗けるのは厳密には視点を下から見上げた想定になっています。真正面からではなく、下方から角度δで見上げた正確な投影図であれば、全体サイズも垂直方向にCos(δ)の係数が掛かって少し縮んでいる必要があります。ただそれでは、折り図的な正確さを失ってしまうとうジレンマが生じます。
そんなわけで、正確な製図的側面と立体構造を直感的に把握するためのお絵描き的側面が融合した図面が「折り紙の折り図」ということになるわけです。(正面は寸法は正確に描き、さらに奥行きを追加する特殊な斜投影法といえるのかもしれません。)
さて、「折り図のお絵描き- 1(風船の基本形を描く)」いかがでしたでしょうか。
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