出版原稿作成の流れと作業Tool
ご存じのように私は折り紙の書籍を何冊か、PODによるペーパーバック、電子書籍(Kindle,Kobo)などで出版しておりますが、出版原稿作成の流れと作業Toolについて備忘録的な感じで、記しておきたいと思います。出版社に頼らずご自身で書籍を出版される方の参考になればと思います。
Amazonの KDP(Kindle Direct Publishing)やPOD出版大手の株式会社PUBFUNさんあたりでは、お手軽にご自身の書籍が出版できるよう様々なサポートサービスが用意されています。いろんなことを人任せにできず、全部自分でやらないと気が済まない(面倒くさいタイプの)人でなければ、これらのお手軽なサービスを上手に活用するのがよろしいかと思います。
それでは、こだわりのある(面倒くさい)方向けの「出版原稿作成の流れと作業Tool」をご紹介してゆきましょう。
RawData現像
カメラからのRawDataをJpegに変換(現像処理)します。王道はAdbe "Light Room" ですが私は"RawTherapee"というソフトウェアを使用させていただいております。小さめの写真ならカメラからのJpeg出力をそのままレタッチしちゃいますが、表紙などの大きくて目玉となる写真はきちんと現像作業から処理しております。
RawTherapee : https://www.rawtherapee.com/
レタッチ
Adbeの"Photo Shop"が王道で、代替は"GIMP"ですね。私は古くてサポートも切れちゃってますが、32bit版の"DIBAS32"を自己責任で愛用させていただいております。"DIBAS32"で出来ない処理は多機能な"RawTherapee"で行います。
GIMP : https://www.gimp.org/
図面(折り図)イラスト作成
こちらもAdbeの"Illustrator"がデファクトスタンダードで、代替は"Inkscape"です。私は版下の作成と併せて”OpenOffice”の"Draw"を使用して作図しております。
Inkscape : https://inkscape.org/en/
編集・レイアウト
こちらもAdbeの"InDesign"が業界標準です。私は先の”OpenOffice Draw”で書籍の出版原稿まで作成しております。(Adbe社さんの製品をそろえると貧乏な折り紙作家は破産しちゃうので)
OpenOffice : http://www.openoffice.org/
LibreOffice : https://ja.libreoffice.org/
版下(印刷原稿)作成
ここで問題になるのは、きちんと印刷するためにRGBではなくCMYKでの入稿が必要になることです。"InDesign"でしたら業界標準だけあって印刷用に特化したPDFフォーマットPDF/X1-a:2001(CMYK、透明効果なし)で出力することが可能なのですが…。
”OpenOffice Draw”では残念ながらCMYKのデータを扱うことができないので、"InDesign"の代替である"Scribus"でPDF/X1-a:2001に変換しています。
”OpenOffice Draw” で編集作業の終了したPDFファイル(Ver.1.4 RGB透明効果含む)を"Scribus"で印刷用にPDF/X1-a:2001へ変換して印刷用の原稿となります。
単なるPDFのフォーマット変換という意味では、Adobeの"Acrobat Pro"にてPDF/X1-a:2001への変換出力が可能なようです。
Scribus : https://www.scribus.net/
ScribusにてPDF/X1-a:2001にエクスポート
RGB→CMYK変換で色合いがかなり変わります。写真などでは事前にCMYKの色調を意識してレタッチしておきます。この際のCMYKでの確認には"Colon"というソフトを便利に使わせていただいております。確認だけでなくこの段階でCMYKに変換した画像を取っておいて、後ほど"Scribus"で合流(差し替え)することもできます。ほとんどの場合はRGBで”OpenOffice Draw”へ貼り付けてPDF(Ver1.4)で出力し、PDF丸ごと"Scribus"でPDF/X1-a:2001へ変換しちゃいます。(凝るわりにはちょっと雑)
Colon : http://blog.livedoor.jp/yamma_ma/Colon.html
PDFでの修正箇所のチェック
書籍原稿となるPDFファイルはページ数が多いので、変更修正箇所のチェックが意外と大変です。”WinMerge”というソフトに"xdocdiff WinMerge"というプラグインを入れるとPDFファイルのまま差分チェックができ、便利に活用させていただいております。主にキャプションのチェックになりますが、修正前、修正後の2つのPDFファイルを入れると異なる箇所をレポートしてくれます。
WinMerge : https://winmergejp.bitbucket.io/
xdocdiff WinMerge Plugin : http://freemind.s57.xrea.com/
EPUB形式ファイルの作成
さて、電子書籍の入稿にはEPUBというファイル形式への変換が必要になります。私は"LeME"というソフトでPDF→EPUBの変換を行っております。電子書籍の作成にはとても便利で優れたソフトウェアで、基本無料で使用できますが、せっかくなのでライセンス登録させていただいております。PDFファイルをそのまま変換することもできますが、1ページ毎の画像ファイルに分解してEPUB形式(固定レイアウト)に変換したりもしています。ページによってJPEG形式やPNG形式の画像を使い分けるとEPUBのファイルサイズを高画質のまま抑えることができます。(Kindleでは、後でAmazon独自のKindle形式に変換されて配信されるのであんまり意味無いようですが…)
LeME : https://leme.style/
EPUBファイルの編集
"LeME"ではほぼ自動でEPUBファイルを生成してくれるのですが、目次のリンク先などちょっと手直ししたい場合があります。この際には"Sigil"というEPUBエディターで、修正を加えます。この"Sigil"だけでEPUBファイルを作ることも可能ですが、HTMLなどの知識が必要ですしかなり面倒くさいです。なので基本"LeME"に任せて、必要なら、ちょっと"Sigil"で修正がおすすめです。
Sigil : https://sigil-ebook.com/
Kinde端末でのチェック
入稿したEPUBファイルがKinde端末で正しく読めるか、Amazonが提供する"Kindle Previewer 3"で確認します。PCやタブレットだけでなくKindle端末でも読めないといけないので、結構な変換処理が行われるようです。表示までに結構時間がかかります。
Kindle Previewer 3 : https://kdp.amazon.co.jp/ja_JP/help/topic/G202131170
以上が私の出版原稿作成の流れと作業Toolです。眺めていただければわかると思いますが、なんでも自分でやらないと気が済まない、こだわりの強い(面倒くさいタイプの)方でなければ、お手軽なサポートサービスを利用されたほうが絶対に便利です。
このような優れたソフトウェアにより出版活動ができており、なによりも開発されている開発者の方々に深く感謝させていただきたいです。
(出版でじゃぶじゃぶ儲けることができましたら、御礼の意味で寄付などさせていただきたいです。早くそうならないかなぁ。)
このようなToolを駆使させていただきまして、4月18日には「進化するバラの折り紙」の英語版"Advanced Origami Rose"を出版させていただく運びとなっております。
楽しい折り紙を!
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